遺留分侵害額請求/遺留分減殺請求

「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」とは、 令和元年7月1日以降に発生した相続について 遺留分が侵害された場合は、「遺留分侵害額請求」をすることにより、侵害された遺留分に相当する額の金銭の支払いを要求することができます(民法1046条)。

「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」とは、 令和元年6月30日以前に発生した相続について 遺留分が侵害された場合は、「遺留分減殺請求」をすることにより、遺言書の効力を失効させ、その範囲内で財産を返せと要求することができます。

以下では、現在ほとんどのケースで問題となる遺留分侵害額請求を中心に解説します。遺留分そのものの意味や対象範囲については遺留分とは?のページで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

遺留分侵害額請求ができる相続人

遺留分侵害額請求ができる相続人は、遺留分が認められている以下の相続人に限ります。なお、 兄弟姉妹には遺留分が認められていませんので、遺留分侵害額請求は出来ません。 民法1042条

  1. 配偶者(夫または妻)
  2. 子ども(代襲相続人を含む)
  3. 直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母 など)※ 子どもがいない場合に限る

遺留分侵害額請求の期限

遺留分侵害額請求の期限は、「 相続が開始した時(被相続人が死亡した時)および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内 」、または「贈与などによって、遺留分が侵害されていることを 知らなかった場合は、相続が開始した時(被相続人が死亡した時)から10年以内 」です(民法1048条)。

遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害額請求は、必ずしなければならないというわけではありません。 被相続人の意思を尊重するのであれば、請求しなくてもよいのです。

遺留分侵害額請求権を行使する場合は、 遺留分を侵害している相手に対して請求 をします。相手に遺留分侵害額請求をする場合には、 内容証明郵便 として出すことをおすすめします。万一、のちに「遺留分侵害額請求をしたかどうか」「いつ遺留分侵害額請求をしたのか」等で争いになったような場合でも、 内容証明 であれば、確実な証拠となります。

まずは、遺留分を侵害している相手と、話し合いによる解決を試みるのがよいでしょう。相手が交渉に応じず、当事者同士で解決するのが難しい場合には、家庭裁判所に調停の申立てをします。

実践!遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求の具体的な方法を、順を追って詳しくご紹介します。

財産の全容を把握する

遺言書をちらっと見せられただけで、父親の財産の全体像はよく分からない・・・。というのはよくある話です。

遺言書で、遺言執行者が指定されている場合は、 遺言執行者 に、財産目録の交付を求めましょう。これによって、財産の全体像、さらには自分の遺留分がどの程度侵害されているかが把握できます。遺言執行者が指定されていない場合は、自分で財産を調べていく必要があります。

内容証明郵便を送る

遺留分侵害額請求には期限があります

遺留分を侵害されていると知ったとき(遺言書の内容を知ったとき)から1年間です。

遺留分侵害額請求権を行使するには、いくら請求するのか?という具体的な細かい話は必要ありません。遺留分が侵害されている可能性がある場合には、とにもかくにも、 遺留分侵害額請求の意思表示をしたほうがよい です。この場合「間違いなく期限内(遺言書の内容を知ったときから1年以内)に遺留分侵害額請求の意思表示をした」ことを証明するために、請求の手紙を 内容証明郵便に配達証明を付けて 、請求相手に送付します。

話し合いをするために、相続財産の額を把握する

遺留分侵害額請求をして、話し合いで解決する場合は、相続財産の総額を、金銭的価値に換算し、そこから遺留分相当の額を算出する必要があります。相続財産に不動産がある場合などは、評価が難しくなります。厳密にいえば、時価で算定すべきですが、時価を表す公的な指標がないからです。

また、相続税の申告が問題になる場合は、相続税の申告書に記載されている金額(路線価)に基づいて話し合いをするのもひとつの方法です。

相続税を申告しないですむ場合や、路線価に納得いかない場合は、不動業者に無料査定を依頼し、額を把握するという方法もあります。

こういった簡易な方法で、話し合いの解決が難しい場合は、不動産鑑定士による鑑定を含めて検討することになります(費用がかかります)。

算定の対象となる財産を把握する

遺留分を算出する場合に組み入れられる財産は、相続開始時(被相続人が死亡した時)にあった財産だけでなく、いわゆる 特別受益財産 を含めます(民法1044条)。そこで、あなたがもし、父親から生前に多額の財産をもらっていた場合は、 遺留分侵害額請求できない可能性 があります。逆に、自分以外の兄弟が、父親から生前に多額の援助を受けていた場合には、あなたは兄弟に対して、より多くの金額を請求することができます。

ただし、生前の財産のやりとりについては、十分な証拠がない場合も多いので、もし裁判になった場合、認められるとは限りません。また、相続債務(借金)がある場合には、その額を控除して計算することになります。

遺留分侵害額の計算式

遺留分侵害額は、次の計算式で求めます。

遺留分侵害額 = 遺留分額 -(遺留分権利者が受けた特別受益・遺贈の額)-(遺産分割で取得すべき財産の額)+(承継する相続債務の額)

このうち遺留分額は、次の計算式で求めます(民法1042条)。

遺留分額 =(遺留分を算定するための財産の価額)×(総体的遺留分の割合)×(法定相続分の割合)

総体的遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人となる場合は3分の1、それ以外(配偶者や子どもが相続人にいる場合)は2分の1です。

計算例

たとえば、次のようなケースで考えてみましょう。

  • 被相続人:父
  • 相続人:長男・二男の2人(配偶者はすでに死亡、生前贈与や相続債務はなし)
  • 相続財産:6,000万円
  • 遺言の内容:「全財産を長男に相続させる」

このケースで、二男が遺留分侵害額請求をする場合の計算は以下のとおりです。

  1. 遺留分を算定するための財産の価額:6,000万円
  2. 総体的遺留分の割合:相続人に子がいるので2分の1
  3. 二男の法定相続分:子2人で等分するので2分の1
  4. 二男の遺留分額:6,000万円 × 2分の1 × 2分の1 = 1,500万円
  5. 二男が遺言で取得した財産・特別受益:0円
  6. 二男の遺留分侵害額:1,500万円 - 0円 + 0円 = 1,500万円

したがって、二男は長男に対して1,500万円の支払いを請求できることになります。実際の事案では、不動産の評価額や生前贈与の有無によって計算が複雑になることが多いため、正確な金額を算出したい場合は弁護士にご相談ください。

話し合いのなかで相手から「自分は父親をこれだけ面倒みたんだから」「父親の事業のために、生前これだけの援助をしたんだから」などと言われる場合があります。これを 寄与分 といいます。しかし、遺留分侵害額請求に対しては、 寄与分は主張できない ことになっていますので、相手がもしこのようなことを言ってきても取り合う必要はありません。

相続人どうしの話し合いで解決しない場合は調停

相続人どうしの話し合いで決着がつかない場合は、家庭裁判所で調停を行います。 調停委員 が間に入ってくれますので、たとえば相手が遺留分のしくみや制度を理解せずに、かたくなな態度を取っている場合などは、有効な手段です。

調停でも解決しない場合は訴訟

調停は家庭裁判所で行われますが、訴訟は地方裁判所で行われます。この段階になると、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、弁護士がかわりに裁判に行きますので、ご本人は裁判所へ出廷する必要がありません。

旧法「遺留分減殺請求」との違い

令和元年6月30日以前に発生した相続については、「遺留分侵害額請求」ではなく「遺留分減殺請求」を行うことになります。請求できる相続人の範囲・期限(1年・10年)・請求の相手方への伝え方(内容証明郵便がおすすめである点)など、手続きの基本的な流れはこれまで説明した内容とほぼ同じです。

両者の最大の違いは、請求した結果どうなるかという点です。

  1. 遺留分侵害額請求(現行法):侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求する権利です。
  2. 遺留分減殺請求(旧法):遺贈や贈与の効力を失効させ、不動産や株式などの現物そのものの返還を請求する権利です(共有状態になることが多く、その後の権利関係が複雑になりやすいという特徴があります)。

令和元年6月30日以前に発生した相続は年々少なくなっていますが、長期間放置されていた相続などでは今なお問題になることがあります。ご自身のケースがどちらの制度の対象になるかは、相続開始日(被相続人が亡くなった日)で判断しますので、迷った場合は弁護士にご相談ください。

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