実践!遺留分侵害額請求・遺留分減殺請求
遺留分侵害額請求・遺留分減殺請求の具体的な方法を、順を追って詳しくご紹介します。
財産の全容を把握する
遺言書をちらっと見せられただけで、父親の財産の全体像はよく分からない・・・。というのはよくある話です。
遺言書で、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者に、財産目録の交付を求めましょう。これによって、財産の全体像、さらには自分の遺留分がどの程度侵害されているかが把握できます。遺言執行者が指定されていない場合は、自分で財産を調べていく必要があります。
内容証明郵便を送る
遺留分侵害額請求・遺留分減殺請求には期限があります。
遺留分を侵害されていると知ったとき(遺言書の内容を知ったとき)から1年間です。
遺留分侵害額請求権・遺留分減殺請求権を行使するには、いくら請求するのか?という具体的な細かい話は必要ありません。遺留分が侵害されている可能性がある場合には、とにもかくにも、遺留分侵害額請求・遺留分減殺の意思表示をしたほうがよいです。この場合「間違いなく期限内(遺言書の内容を知ったときから1年以内)に遺留分侵害額請求・遺留分減殺の意思表示をした」ことを証明するために、請求の手紙を内容証明郵便に配達証明を付けて、請求相手に送付します。
話し合いをするために、相続財産の額を把握する
遺留分侵害額請求・遺留分減殺請求をして、話し合いで解決する場合は、相続財産の総額を、金銭的価値に換算し、そこから遺留分相当の額を算出する必要があります。相続財産に不動産がある場合などは、評価が難しくなります。厳密にいえば、時価で算定すべきですが、時価を表す公的な指標がないからです。
また、相続税の申告が問題になる場合は、相続税の申告書に記載されている金額(路線価)に基づいて話し合いをするのもひとつの方法です。
相続税を申告しないですむ場合や、路線価に納得いかない場合は、不動業者に無料査定を依頼し、額を把握するという方法もあります。
こういった簡易な方法で、話し合いの解決が難しい場合は、不動産鑑定士による鑑定を含めて検討することになります(費用がかかります)。
算定の対象となる財産を把握する
遺留分を算出する場合に組み入れられる財産は、相続開始時(被相続人が死亡した時)にあった財産だけでなく、いわゆる特別受益財産を含めます。そこで、あなたがもし、父親から生前に多額の財産をもらっていた場合は、遺留分侵害額請求・遺留分減殺請求できない可能性があります。逆に、自分以外の兄弟が、父親から生前に多額の援助を受けていた場合には、あなたは兄弟に対して、より多くの金額を請求することができます。
ただし、生前の財産のやりとりについては、十分な証拠がない場合も多いので、もし裁判になった場合、認められるとは限りません。また、相続債務(借金)がある場合には、その額を控除して計算することになります。
話し合いのなかで相手から「自分は父親をこれだけ面倒みたんだから」「父親の事業のために、生前これだけの援助をしたんだから」などと言われる場合があります。これを寄与分といいます。しかし、遺留分侵害額請求・遺留分減殺請求に対しては、寄与分は主張できないことになっていますので、相手がもしこのようなことを言ってきても取り合う必要はありません。
相続人どうしの話し合いで解決しない場合は調停
相続人どうしの話し合いで決着がつかない場合は、家庭裁判所で調停を行います。調停委員が間に入ってくれますので、たとえば相手が遺留分のしくみや制度を理解せずに、かたくなな態度を取っている場合などは、有効な手段です。
調停でも解決しない場合は訴訟
調停は家庭裁判所で行われますが、訴訟は地方裁判所で行われます。この段階になると、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、弁護士がかわりに裁判に行きますので、ご本人は裁判所へ出廷する必要がありません。