遺言書の書き方

ここでは、具体的にいくつか文例を挙げながら、自筆証書遺言の書き方を解説します。あわせて、遺言書が無効になってしまう主な原因もまとめていますので、これから作成される方はぜひチェックリストとしてご活用ください。

遺言書の基本のルールは、以下のようなものがあります(民法968条1項)。

弁護士大倉 りえ
この記事を監修した弁護士

弁護士 大倉 りえ

大阪事務所所長。10年以上の実務経験を活かし、遺言書作成のご相談も丁寧にお話を伺い、納得のいく解決へ導きます。

自筆証書遺言を書くときの基本ルール

  1. 全文自筆(手書き)で書きます。(※)

    (※)平成31年1月13日以後に作成する自筆証書遺言は、 相続財産目録については手書きでなくてもよい ことになりました(ただし、目録の各ページに署名・押印が必要。)。

  2. タイトルは「遺言書」とします。
  3. 氏名を自署します。
  4. 日付を記入します。
  5. 押印をします。
    法律的には認印でも問題ありませんが、のちのトラブルをなるべく回避するため、実印で押印することをおすすめします。
  6. 遺言執行者を指定します。
    のちのトラブルを回避するため、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。詳しくは「遺言執行者」とは?のページをご覧ください。
  7. 封入・封印して保管します。
    自宅などで保管すると、紛失・改ざんや、相続人に発見されないまま手続きが進んでしまうリスクがあります。こうした点が気になる場合、法務局が原本を保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」という制度もあります。

なお、遺言書には自筆証書遺言のほかに公正証書遺言・秘密証書遺言などの方式があります。それぞれの特徴については遺言書の種類のページで詳しく解説しています。

遺言書が無効になる主な原因とチェックポイント

自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、方式や内容にわずかな不備があるだけで無効になってしまうリスクがあります。作成前・作成後に、以下のポイントをチェックしましょう。

  • 全文自筆で書かれているか
    相続財産目録を除き、パソコンでの作成や代筆は無効になります。
  • 日付が特定できるか
    「令和8年7月吉日」のように日付を特定できない記載は無効になります。「令和8年7月30日」など、年月日を具体的に記載してください。
  • 氏名が自署されているか
    誰が書いたか特定できるよう、本名を自署します。
  • 押印があるか
    押印のない遺言書は無効になります。
  • 訂正が正しい方式でされているか
    民法で定められた方式(変更箇所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印すること。民法968条3項)に従わない訂正は無効です。訂正箇所が多い場合は書き直しましょう。
  • 内容が具体的で、誰が読んでも解釈が一つに定まるか
    遺言書の内容が曖昧だと、のちの相続人間のトラブルにつながります。
  • 作成当時、遺言能力(判断能力)があったか
    認知症など判断能力に疑いがある状態で作成された遺言は、のちに無効を争われる可能性があります(民法963条)。
  • 2人以上で共同して1通の遺言書を作成していないか
    遺言書は必ず1人につき1通作成します(共同遺言の禁止。民法975条)。

これらのポイントは、実際に作成してみるとご自身だけでは判断が難しい部分も多くあります。「このまま出しても無効にならないか不安」という場合は、作成後の内容チェックだけでも弁護士にご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

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妻に全財産をわたす遺言書

遺 言 書

遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻 ○山△子(昭和○年○月×日生)に相続させる

遺言執行者として、妻 ○山△子を指定する。

令和○年○月×日

住所 神奈川県横浜市旭区○○町1-2-3

遺言者  ○山 □夫 (印)

妻と子どもに財産をわたす遺言書

遺 言 書
遺言者 ○山□夫は、次の通り遺言する。
第1条 妻 ○山△子(昭和○年○月×日生)には、以下の不動産を相続させる。(ⅰ)
  1. 土地
    所  在 神奈川県横浜市旭区○○町1-2-3
    地  番 ○番○
    地  目 宅地
    地  積 ○平方メートル
  2. 建物
    所  在 神奈川県横浜市旭区○○町1-2-3
    家屋番号 ○番○
    種  類 宅地
    構  造 木造スレート葺2階建て
    床 面 積 1階 ○平方メートル 2階 ○平方メートル
第2条 長男 ○山■介(昭和○年○月×日生)には、以下の預金を相続させる。(ⅱ)
  1. ○○銀行××支店の遺言者名義の普通預金 口座番号 1234567
  2. △△銀行□□支店の遺言者名義の当座預金 口座番号 7654321
第3条 その他遺言者に属する一切の財産は、妻 ○山△子に相続させる。
第4条 遺言執行者として、妻 ○山△子を指定する。
令和○年○月×日

住所 神奈川県横浜市旭区○○町

遺言者  ○山 □夫 (印)

  1. 不動産については、所在だけでなく、地番、地目、家屋番号等も記載します。
  2. 貯金については、銀行名と支店名だけでなく、口座番号もきちんと記載します。

法定相続人でない人に財産をわたす遺言書

遺 言 書
遺言者 ○山□夫は、次の通り遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、内縁の妻 ×中○子(神奈川県横浜市青葉区○○町3-2-1・昭和○年○月×日生)に包括して遺贈する。(ⅰ)
第2条 遺言執行者として、内縁の妻 ×中○子を指定する。(ⅱ)
令和○年○月×日

住所 神奈川県横浜市旭区○○町

遺言者  ○山 □夫 (印)

  1. 内縁の妻に相続権はありませんので、「相続させる」ではなく「遺贈する」という言葉を使います(民法964条)。
  2. 内縁の妻など、法定相続人以外の人に財産をわたす場合、のちのトラブルを避けるためにも、このように遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。

公正証書遺言で作成する場合

ここまで紹介した文例は、いずれも自筆証書遺言を前提にしたものです。公正証書遺言の場合は、全文を自筆で書く必要はなく、公証人に伝えた内容をもとに公証人が文案を作成してくれます。

そのため、伝える内容自体(誰に・何を・どのように渡すか)は自筆証書遺言の文例と共通する部分が多くありますが、方式面の不備で無効になるリスクがほとんどないというメリットがあります。

「内容は決まっているが、公正証書遺言にするか自筆証書遺言にするか迷っている」「文案を弁護士にチェックしてほしい」という場合は、遺言トータルサポートプランで、文案作成から公証役場とのやりとりまで弁護士がサポートいたします。

遺言書の書き方に関するよくある質問

自筆証書遺言はパソコンで作成してもいいですか?

本文はすべて自筆(手書き)で作成する必要があります。ただし、平成31年1月13日以後に作成する自筆証書遺言であれば、相続財産の目録についてはパソコンで作成した書面や通帳のコピー等を添付することができます(民法968条2項。この場合、目録の各ページに署名・押印が必要です)。

押印する印鑑は実印でなければいけませんか?

法律上は認印でも有効です。ただし、のちに押印の真正が争われるトラブルを避けるため、実印での押印をおすすめします。

日付を「令和8年7月吉日」のように書いてもいいですか?

日付が特定できないため無効になります。「令和8年7月30日」のように、作成した年月日を具体的に記載してください。

書き間違えた場合はどのように訂正すればいいですか?

民法で定められた方式(変更箇所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印すること。民法968条3項)に従わないと、訂正が無効になったり、最悪の場合は遺言書全体が無効になるおそれがあります。訂正箇所が多い場合は、書き直すことをおすすめします。

自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらで作成すべきですか?

費用をかけずに手軽に作成したい場合は自筆証書遺言、無効になるリスクを避け確実性を重視したい場合は公正証書遺言が向いています。それぞれの違いは遺言書の種類のページで詳しく解説しています。

遺言書を書いたら誰かに相談したほうがいいですか?

特に遺留分や相続人関係が複雑な場合、内容に不備があると無効になったり、のちの相続トラブルの原因になったりします。作成前に弁護士へご相談いただくことをおすすめします。