血族相続人(子ども、親など、兄弟姉妹)の相続分
血族相続人(子ども、親など、兄弟姉妹)が配偶者と一緒に相続する場合、先ほどの配偶者の相続分の残りが、相続分になります。
まとめると、次のとおりです(ただし、昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までに開始した相続は、先ほど記載した相続分の残りです。)。
子ども ・・・2分の1
子どもが数人いる場合は、同じ割合で相続分を分け合います。養子も実子も、同じ割合です。前夫(前妻)との間に生まれた子も、同じ割合です。法律上の夫(妻)以外との間に生まれた子も、同じ割合です(ただし、平成13年7月以降に開始した相続)。
例えば、A(被相続人)には、前夫Bとの間に、子Cがいます。今の夫Dとの間にも、子Eがいます。さらに、結婚はしませんでしたが、交際相手Fとの間にも、子Gがいます。Aの相続人は、今の夫Dと、子C、子E、子Gです。今の夫Dの相続分は2分の1です。子C、子E、子Gの相続分は、それぞれ6分の1(2分の1÷3人)になるのです。
被相続人の親(又は祖父母など) ・・・3分の1
被相続人の親が複数いる場合、同じ割合で相続分を分け合います。被相続人が養子になっていれば、実親2人、養親2人の合計4人になることもあります。
例えば、A(被相続人)に、夫B、実父C、実母D、養父Eがいるとしましょう。
Aには、子どもはいません。この場合、夫Bの相続分は3分の2です。実父C、実母D、養父Eの相続分は、それぞれ9分の1(3分の1÷3人)になるのです。注意すべきなのは、被相続人の親が1人でも相続人になる場合、被相続人の祖父母は相続人にならないことです。被相続人の親がいない場合に、はじめて、祖父母が相続人になるのです。
被相続人の兄弟姉妹 ・・・4分の1
被相続人の兄弟姉妹が複数いる場合、基本的には同じ割合で相続分を分け合います。しかし、片方の親のみが同じ兄弟姉妹がいる場合、その兄弟姉妹の相続分は、両方の親が同じ兄弟姉妹の半分になります。
例えば、A(被相続人)に、夫B、兄C、姉D、弟Eがいるとしましょう。
Aには子どもはおらず、父親X、母親Y(及び祖父母)も既に亡くなっています。兄Cと、姉Dは、A(被相続人)と同じく、父親X、母親Yの子どもですが、弟Eは、父親Xと、前妻Wの子どもです。この場合、夫Bの相続分は4分の3です。兄C、姉Dの相続分は、それぞれ20分の2(4分の1×5分の2)、弟Eの相続分は、20分の1(4分の1×5分の1)になるのです。計算が複雑ですが、弟Eの相続分が、兄C、姉Dの相続分の半分になるのです。
※ 法律上の夫(妻)以外との間に生まれた子ども
実は、以前、法律上の夫(妻)以外との間に生まれた子ども(非嫡出子といいます。)の相続分は、法律上の夫婦の間に生まれた子ども(嫡出子といいます。)の半分であるという規定がありました。この規定につき、最高裁判所は、遅くとも平成13年7月には、憲法14条1項に違反していたと判断したため、現在では、この規定は削除されました。
問題は、平成13年7月以降に開始した相続につき、既にこの規定に従って遺産分割などをしていた場合、もう1度遺産分割等をやり直さなければならないのか否かです(正確には、平成12年10月以降に開始した相続でも問題になります。)。
結論としては、関係者間の合意などによって、既に確定的な法律関係になっている場合には、もう1度遺産分割などをやり直す必要はありません。しかし、いまだ確定的な法律関係になっていない場合には、先ほどの最高裁判所の判断に従う必要があります。例えば、以下のとおりとなります。
① 嫡出子Aが、非嫡出子Bに相談せずに、遺産である不動産の持分3分の2を第三者に譲渡した場合、Aは、6分の1を過度に譲渡したことになります。この場合、いまだ確定的な法律関係になっていないので、先ほどの最高裁判所の判断に従い、嫡出子Aの持分2分の1(Aから譲渡を受けた第三者の持分も2分の1)、非嫡出子Bの持分2分の1になるように、修正する必要があります。
② 非嫡出子Bの知らない間に、嫡出子Aの持分3分の2が、競売等で売られてしまった場合、6分の1が過度に売られてしまったことになります。この場合、いまだ確定的な法律関係になっていない可能性があるので、先ほどの最高裁判所の判断に従い、嫡出子Aの持分2分の1(競売で不動産を買った第三者の持分も2分の1)、非嫡出子Bの持分2分の1になるように、修正の可能性があります。
③ 相続人全員の合意によって、嫡出子Aの相続分3分の2、非嫡出子Bの相続分3分の1として、預金の払い戻しを受けている場合、Aは6分の1を過度に受け取ったことになります。この場合、既に確定的な法律関係になっているので、そのままAは預金を所持できます。
④ Aの債権者が、嫡出子Aの持分3分の2の預金を差し押さえて、取り立ても完了していた場合、Aの債権者は、6分の1を過度に取り立てたことになります。この場合、Bが差押えを知らなかったとしても、取立てが完了していた場合には、Aの債権者は、6分の1をBに返還する必要はありません。しかし、Bは、Aに対し、6分の1の返還を請求することができます。
⑤ 相続人全員で、嫡出子Aが借金を3分の2返済し、非嫡出子Bが借金を3分の1返還する合意をした場合、Aは6分の1過度に借金を返済することになります。この場合、既に確定的な法律関係になっているとして、そのままの割合で借金を返済することになるおそれがあります。
⑥ 一部の遺産について、嫡出子Aの持分3分の2、非嫡出子Bの持分3分の1とする遺産分割が完了した場合、残りの遺産については、嫡出子Aの相続分2分の1、非嫡出子Bの相続分2分の1になります。